前置き
転写されてきたmRNAの1つ1つの塩基はいわば暗号であり、そのままだと利用できないので、解読してやる必要があります。そして、この暗号を解読してくれるのがリボソームです。リボソームはmRNAに存在する3つの塩基を1単位として読み取っていきます。例えば、CAU(シトシン、アデニン、ウラシル)という暗号を解くとヒスチジンになるといったように、リボソームはアミノ酸をたくさんくっつけてタンパク質を合成していきます。このように、リボソームがmRNAの暗号を読み取ってタンパク質を合成していく過程の事を翻訳といいます。
リボソームには小サブユニットと大サブユニットがあり、それぞれ役割が異なります。
小サブユニット( 人間のように真核細胞を持つ生物は40Sをもち、細菌のように原核細胞を持つ生物は30Sをもつ1 )は、 mRNAのコドンという暗号を1つ1つ解読し、tRNAと結合させる、いわば暗号解読センターとしての機能を持ちます。2
大サブユニット(真核細胞は60S、原核細胞は50S)はtRNAに付いたアミノ酸をペプチド転移によって連結させタンパク質を合成していきます。そして、リボソーム小サブユニットがmRNAの終始コドン(UAA,UAG,UGA)を解読するとそこで連結は終了し、タンパク質がリボソーム大ユニットから出ていきます。
本文
リボソームにはEサイト、Pサイト、Aサイトがあり、タンパク質合成の機序としては以下のステップを踏みます。(図では原核細胞の例で示しますが、真核生物でも機序は同じです)
- mRNAにリボソーム30Sが結合する
- PサイトにアミノアシルtRNAがくっつき、リボソーム30S-アミノアシルtRNA複合体(30S開始複合体)となる
- 30S複合体にリボソーム50Sがくっつき、70S開始複合体となる
- AサイトにアミノアシルtRNAがくっつく
- ぺプチジルトランスフェラーゼにより、PサイトのアミノアシルtRNAに結合してるアミノ酸がAサイトのアミノアシルtRNAのアミノ酸に転移する(即ち、この時点でAサイトのアミノアシルtRNAにはアミノ酸が2個くっついている)
- リボソームが1つずれることで、AサイトにあったものがPサイトに、PサイトにあったものがEサイトに移動する
- EサイトのtRNAが外れる
- ②~⑤の繰り返し
- リボソーム30SがmRNAの終始コドンを解読すると、その時点でアミノ酸の連結はストップし、できたポリペプチド(タンパク質)が50Sを通ってリボソーム外へ出ていく。同時にmRNAがリボソームから遊離する
①~③の過程を開始、④~⑧の過程を伸長、⑨の過程を終止といい、タンパク質の合成はこの3つの過程から成り立ちます。
国家試験
では国家試験の問題を解いてみましょう。(第102回薬剤師国家試験 問116)
真核細胞におけるmRNAからタンパク質への翻訳過程に関する記述について、誤っているのはどれか。1つ選べ。
1 翻訳過程は、開始、伸長及び終結の3段階の反応により完結する。
2 遺伝子の転写反応が完結する前に、翻訳開始反応が起こる。
3 翻訳開始反応は、mRNAの5’末端側から3’末端側の方向に進行する。
4 リボソームがもつペプチジルトランスフェラーゼ活性により、ペプチド鎖伸長反応が起こる。
5 アミノアシルtRNAの生成には、ATPのエネルギーを利用してアミノ酸が活性化される必要がある。
参考文献
[化学療法学 医療のあるべき姿を見据えて 2010] p.74~78
